2024.07.15

葬儀の基礎知識

御母堂・御尊父の使い方とは?葬儀シーンで押さえておきたい敬称について解説

お葬式のシーンではさまざまな配慮が求められますが、なかでも御母堂や御尊父などの敬称はミスが起こりやすいポイントです。敬称は、喪主から見た故人の続柄で表します。御母堂・御尊父は、弔電やお悔みメールなどでも用いられる言葉ですが、使い方を間違えるとマナー違反になってしまいます。

そこで今回は、御母堂や御尊父の意味や使われるシーン、注意点などを解説します。ご遺族に対して失礼のないよう、それぞれの敬称の意味と正しい使い方を把握しておきましょう。

御母堂・御尊父はどんな読み方?

御母堂は「ごぼどう」、御尊父は「ごそんぷ」と呼びます。

御母堂は第三者の家族である母親、御尊父は父親を敬う言葉です。お悔やみの場で亡くなった方に対して使われることが多いですが、生きている方に対しても使用できます。また、とくに敬いたい方に対しても御母堂や御尊父を使えます。

元々は、公家や武家といった身分の高い人が、母親や父親を呼ぶときの敬称として使われていたそうです。身分の差がほとんどなくなった現在では、冠婚葬祭での定型文として定着しており、日常で使用することはほとんどありません。

御母堂・御尊父が使われるシーン

御母堂や御尊父という言葉は主に冠婚葬祭で使われますが、なかでも多いのがお葬式です。「弔電」や「ビジネス相手へのお悔みメール」で使用されます。

具体的にはどのように使えばよいのか、以下で定型文を一部紹介します。

マナーや言葉遣いに不安な方は、定型文を利用することをおすすめします。

弔電で使える定型文

御母堂バージョン

ご母堂様のご逝去の報に接し、謹んでお悔やみ申し上げますとともに、心からご冥福をお祈りいたします。
御母堂様の突然の悲報に接し、驚いております。
残されたご家族の皆様のご心情をお察しし、すぐにもお慰めに飛んでまいりたい気持ちですが、遥かな地よりご冥福をお祈りいたします。
ご母堂様のご逝去の報に接し、謹んでお悔やみ申しあげますとともに、心からご冥福をお祈りいたします。
毎日美味しいごはんを作って頂き、楽しい食卓を囲ませて頂いたのが
昨日の事の様に思い出させられます。
せめて天国でお会いしたときにお返しが少しでもできるよう、私も精進致します。

御尊父バージョン

ご尊父様のご逝去の報に接し、謹んでお悔やみ申し上げますとともに、心からご冥福をお祈りいたします。
ご尊父様の在りし日のお姿を偲びつつ、ご冥福をお祈りいたします。
長年、「世のため人のため」本当にご苦労様でございました。
ご尊父様のご逝去の報に接し、謹んでお悔やみ申しあげます。
故人とは生前よく、釣りをご一緒させていただきました。
お酒が好きな方で、釣果の良し悪し問わず、豪快に宴を盛り上げていただきました。
もうそのお姿も拝見出来ないとは無念でいたしかたございません。
今はただ、心からご冥福をお祈りいたします。

お悔やみメール(ビジネス)で使える定型文

御母堂バージョン

ご母堂様のご訃報に、当社社員一同、謹んで哀悼の意を表します。
ご遺族の皆様ならびに社員一同に、心からお悔やみ申しあげます。
御母堂様のご逝去に際し、惜別の念を禁じ得ません。
これまでのご功労に敬意を表しますとともに、
心からご冥福をお祈りいたします。
御母堂様の訃報に接し、心よりお悔やみ申し上げます。
在りし日のお姿を偲びつつ、ご冥福をお祈りいたします。

御尊父バージョン

ご尊父様のご訃報に、弊社社員一同、謹んで哀悼の意を表します。
ご遺族の皆様ならびに社員一同に、心からお悔やみ申しあげます。
ご尊父様の在りし日のお姿を偲びつつ、ご冥福をお祈りいたします。
長年、「世のため人のため」本当にご苦労様でございました。
御尊父様のご逝去の報に接し、心よりお悔やみ申しあげます。
ご生前をお偲びし、悲しみにたえません。故人のご冥福をお祈りいたします。

御母堂・御尊父と似ている敬称

先述のとおり、御母堂(ごぼどう)や御尊父(ごそんぷ)は第三者の母親や父親に対して使う敬称です。そのため、自分や義理の親に対しては使えません。

義理の母や父に対しては、「御岳母(ごがくぼ)」や「御岳父(ごがくふ)」という敬称を使用します。厳密には、夫の母親や父親を敬う言葉です。

一方で、妻の母親や父親を敬う言葉には「御丈母(ごじょうぼ)」「御岳丈(ごがくじょう)」が当てはまります。

しかし、夫側・妻側にかかわらず「御岳母」や「御岳父」で済ませるケースが多いため、細かなマナーという程度に理解しておきましょう。

御岳母や御岳父の定型文

御岳母バージョン

ご岳母様のご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申しあげます。
どうか安らかな旅立ちでありますように。心からご冥福をお祈りいたします。
ご岳母様のご訃報に接し、お悲しみをお察し申しあげますとともに、
衷心より哀悼の意を表します。

御岳父バージョン

ご岳父様のご逝去の報に接し、謹んでお悔やみ申し上げますとともに、
心からご冥福をお祈りいたします。
ご岳父様のご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申しあげます。
ご生前をお偲びし、悲しみにたえません。 故人のご冥福をお祈りいたします。

御母堂や御尊父を使う際の注意点

たとえ御母堂や御尊父の意味を正しく理解していても、間違った使い方をしてしまうとマナー違反になることがあります。

そこで、御母堂や御尊父を使う際によくある失敗を3つ紹介します。

注意点①文面上で使用し、口頭では砕けた表現(お母様やお母上)を使うべき

御母堂や御尊父は文面上のみで使用しましょう。書面や公式な場では、より正式な表現を用いることが望ましいとされています。

一方で、口頭ではより親しみやすい言葉を選ぶと、相手とのコミュニケーションを円滑にすることができます。お母様やお母上、お父様やお父上などを使うように心がけてください。

ただし、相手の好みや文化的な背景に応じて使い分けることも大切です。それぞれの状況や相手との関係に合わせて適切な表現を選択するようにしましょう。

注意点②弔電で使う場合は公的な文章構成や内容を心がける

弔電では、故人への敬意と哀悼の気持ちを示すことが求められます。また、ご遺族への慰問や支援の意も合わせて表現します。

そのため、弔電はさまざまな方へ届けられることを前提としなくてはいけません。相手の習慣や価値観などを考慮しながら、公的な文章構成や内容を心がけることが大切です。

御母堂や御尊父など、哀悼の気持ちを向ける方の立ち位置を間違えないようにしましょう。

注意点③お悔みメールは弔電とは異なる

お悔みメールは、故人のご逝去やそのご家族に対して追悼の意を示すものです。

そのためビジネス関係においては、関係が深く、相手との信頼関係や個人的なつながりがある場合にのみ送るのが無難です。

お悔やみメールの文面は、通常の弔電とは異なります。とくに、ビジネス上の関係にもとづいて故人の業績や貢献、関連する内容が含まれるポイントは大きな違いです。

お悔やみメールは、相手との関係を深める機会でもあります。正しい書き方で送ることで、信頼関係を維持し、ビジネス上のつながりを強化する効果も期待できるでしょう。

敬称以外に注意したい言葉

フォーマルなシーンでは相手への呼称だけではなく、控えたい言葉があります。「忌み言葉」「重ね言葉」「宗教的に控える言葉」の3つが代表的です。

それぞれについて詳しく解説します。

忌み言葉

忌み言葉とは、不運や災いを招くとされる表現や言葉です。

言葉自体が不適切であり、相手の喪失や悲しみに寄り添うシーンでは相手に不快な思いをさせてしまいます。相手の文化や習慣に敬意を払うためにも使用は控えましょう。

【忌み言葉の例】

中止更に疎んじる中途半端離れて
猶(なお)追って次に傷つく見失う
しつこい傾く耐える長引く
撮る二度最後取る引き続き
流れる無くす相次ぎなおも不運

重ね言葉

重ね言葉とは、同じ言葉を重ねて使う表現です。ニュアンスや感情表現が伝わりにくくなるほか、冷淡さを感じさせてしまうこともあります。弔電やお悔みメールなどでは控えましょう。

【重ね言葉の例】

どんどん重ねる再三再四またまた追って
重ねがさね益々だんだん返す返すわざわざ
再々ぜひぜひつくづく度々もともと
時々なかなか次々二度日々
追いかけるいよいよ次に近々皆々様

宗教的に控える言葉

特定の宗教や信仰に関連する用語や表現も避けるべきです。

たとえば「神聖な名前や称号の使用」や、「宗教的なトピックやイメージ」「宗教的なシンボル」に関する言葉や表現は他人の感情を刺激するおそれがあります。

御母堂 御尊父以外の家族の敬称とは?

御母堂や御尊父を使うシーンでは、祖父母や叔父など、ほかの家族の敬称も口にすることがあります。

そんなときに間違わないように、家族の敬称も覚えておきましょう。

祖父ご祖父様、祖父君、おじい様
祖母ご祖母様・祖母君・おばあ様
ご尊父様・お父上様・お父様・父君
ご母堂様・お母上様・お母様
伯父(父母の兄)伯父様・伯父上様
伯母(父母の姉)伯母様・伯母上様
叔父(父母の弟)叔父様・叔父上様
叔母(父母の妹)叔母様・伯母上様
ご主人様・旦那様
ご令室様・奥様・奥方様
息子ご令息様・ご子息様
ご令嬢様・お嬢様
ご令兄様・兄上様・お兄さん
ご令弟様・ご弟様・弟さん
ご令姉様・姉上様・お姉さん
ご令妹様・ご妹様・妹さん
ご令孫様
ご令甥様・甥御様
ご令姪様・姪御様

まとめ

今回は、御母堂や御尊父の読み方や意味、使用シーンについて紹介しました。

文面と口頭では表現を変えて、信頼関係を第一に考えることが大切です。

御母堂や御尊父の正しい使い方を理解して、敬意や哀悼の気持ちを表現できるようにしましょう。

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